なぜ所得控除はあるのか?
衆院選とハロウィーン ~10月~
菅内閣から岸田内閣へバトンタッチし、半月が過ぎようとしています。
岸田首相ですが、内閣発足から一夜明けた翌日の取材で記者団に「野球で言うならばプレイボール直後の緊張感を感じている。」と話していました。野球になぞらえる点、もしやと思って調べると高校時代に野球部に所属していたそうです、また広島県出身ということで、広島東洋カープの熱心なファンでもあるそうです。そういった表現が自然と出てくるのは、やはり自分の得意な分野につながっているからなのかと感じました。
話は戻りますが、衆院選の投票日(10/31)は、くしくもハロウィーンです。周知の事実ですが、選挙にも税金が使われています。コロナも少し落ち着いたと言われる中でのハロウィーン、そして秋の行楽シーズンを迎えますが、選挙結果はもちろん、今の状況が人々の投票行動や投票率にどのような影響を与えるのか興味を持って見守りたいと思います。
所得控除とは?
前回のブログで年末調整・確定申告についての話がありましたが、今回は所得控除について少しお話ししたいと思います。
所得控除とは、本来の所得から、さらに控除できるものです。
つまり簡単に言えば、
所得=収入-経費=利益(儲け)
所得税額=(収入-経費-所得控除)×税率
で、求められます。
所得控除は、種類が多いのですが、特に「課税最低限」と呼ばれるものを構成する所得控除は以下の通りです。
・基礎控除
・配偶者控除(配偶者特別控除)
・扶養控除
(生命保険料控除についても、課税最低限に加える説明がなされることもある)
(給与所得者に認められる給与所得控除額もこれに含まれる)
所得控除を行う理由
所得税の対象である個人は生身の人間であり、個人で生活をするために最低限必要なお金もあれば、家族を養うために生じる出費や、将来の生活保障のためにかかる保険料など、さまざまな諸費用があり、これらも一定の要件下で控除を認めることが、社会政策的には必要になるからです。
例えば、所得控除の一つに医療費控除があります。生身の個人の生活には病気やケガもあり、家族を持つ者にはそれ相応の医療費が生じることへの配慮がある、ということです。
これらの所得控除は「担税力※」に配慮したものということになります。
※担税力…税を負担できる能力のこと。税金を納めることができる能力のこと。
給与所得者であれば、給与所得控除額(650,000円)と基礎控除(380,000円)の合計額である103万円までは、給与所得の収入があったとしても、所得税は0円になるからです。結婚をしており、相手(配偶者)の収入が所定の要件を満たせば、配偶者控除(380,000円)も認められていますので、141万円までは課税されないことになります。(ただし、平成30年分から収入制限が入りました。)
課税最低限については、最低生活費には課税をしないという考えによるものです。収入がいくらであっても、誰にでも必ず最低限このくらいはかかるという生活費はあります。したがって、高額所得者であるかどうかに関わらず、本来誰もが最低限課税されない金額として認められるべきだと思います。
少なくとも、これまではそのような考えのもとで、基礎控除(380,000円)、配偶者控除(380,000円)には収入制限もなく、誰にでも認められてきました。
ところが、平成29年度税制改正で配偶者控除には「収入制限」が導入され、平成30年度税制改正では基礎控除の額が収入により変動する(高額所得者は減額され、あるいはなくなる)改正がされました。
配偶者控除と基礎控除の改正
さらに平成29年度税制改正では、150万円の収入金額まで配偶者控除が認められ、それを超える場合の配偶者特別控除についても201万円の収入金額までは認められることになりました。
しかし、このように配偶者控除を認める範囲を拡大することは減税になり、減税分については税収不足をもたらします。そこで、高額所得者については配偶者控除を認めない(または所得控除額を減らす)という増税も行われたのです。
なお、配偶者控除については、法律婚をしていること(民法上の配偶者であること)が必要であるとのことです。
法人税の場合
では、法人税はどうかというと、こうした所得控除はありません。それは、法人税の場合は、法人の所得が対象になっており、株式会社や有限会社などの法人には、生身の人間とは異なるため、所得税のような担税力への配慮を考える必要はないからです。
最後に
このように所得税には、一人の人間としての、それぞれの生活に配慮した所得控除が行われています。
そして秋も深まる頃、保険料控除証明書などがご自宅に郵送され、会社にお勤めの方々は年末調整に必要な書類の準備に入るかと思います。また年が明ければ、確定申告の準備に入り、事業を行う皆さまも忙しい時期を迎えることと思います。
そんな時、所得控除の理由を思い出して頂き、今年はいつもと違う気持ちで取り組んで頂けるとうれしいです。
新規事業を立ち上げようとお考えの方、個人の確定申告に悩んでいる方など、ぜひ一度ご相談下さい。群馬県前橋市の税理士法人 田子会計事務所は皆さまのさまざまなケースに応じ、対応致します。